はじめに東日本大震災でお亡くなりになった方々に心より哀悼の意を表します。
2003年にアメリカ大陸以外では初めて、米国内科学会American College of Physicians(ACP)のJapan Chapter(日本支部)が設立されました。私はその前から認定内科専門医をACPのFellowにというACPからの提案を受けて、認定内科専門医会(現、日本内科学会専門医部会)としてFellowを推薦していた関係で、ACP本部との交渉に初めから立ち会ってきました。最初は国外には支部はおかないという原則論で絶対無理と言われた日本支部を開設にこぎ着けることが出来たのは初代支部長の黒川先生の剛腕のおかげです。現在では支部発足当時約300名であった会員数が1000名を超え3倍以上になりました。また、医学生や研修医など若手会員が20%を占めるまでになりました。これは他の米国のACP支部では考えられない驚異的な増加率ということで本部から賞賛され今年のサンディエゴでのACP支部長会議で黒川支部長が優秀支部賞を受けられました。2002年に京都で開催された第26回国際内科学会議の会長講演で黒川先生は「Globalize the Evidence; Localize the Decision」というメッセージを発信されました。それに似たもので、「Think globally, Act locally」という言葉があります。単に国際的に広い視野を持って地域で活動するだけでなく、多様な考えも受容できる広い心を持ち、実際に足が地に着いた活動をしろという意味だと解釈しています。日本にも多様な人がいると言われるかもしれませんが国際的に見れば日本はかなり均一化された社会です。この多様性を受容し視野を広げるためにACPに参加することはとても効果的です。私が初めて米国のACP年次講演会に参加したとき、Fellow称号授与式(Convocation Ceremony)の盛大さにも驚きましたが、もっと感心したのは学会運営そのものでした。プログラムは総合内科医を主とするACP会員の生涯教育という明確な目標に沿って構築されており、殆どすべてが多彩な教育講演と実践的教育プログラムでした。医師免許も更新制で生涯教育(CME)単位を取らないといけない米国と終身免許制の日本では臨床系学会のコンセプト自体も異なっているのは当然かもしれませんが、見習うべき点も多く感じました。その一つが2010年度の第107回日本内科学会講演会で取り入れた実践的生涯教育プログラムです。「一会場一講演」主義を伝統としてきた日本内科学会で初めて、総合内科専門医が中心となって内科救急・ICLS講習会(JMECC)をはじめイチローなどを使ったシミュレーション教育、感染症や認知症実践教育などを取り入れ大変好評でした。日本内科学会認定制度審議会長の頃にトレーニング問題を生涯教育に取り入れましたが、ACPのMKSAPに比べると大きな差があります。日本でも米国の臨床教育を外見だけ見習って新卒後臨床研修制度が導入され、少しは進歩しましたが、国試の抜本的改革もなく、研修の質の評価やアウトカム設定も不十分なままであり、米国のレジデント教育とは大きな差があります。私は文科省のGPで140名以上の島根大学の医師、医学生等を20回近くに分けて米国などの地域医療教育に熱心な大学医学部に短期派遣し、また同行し、教員だけでなくレジデントや医学生の日常を体験し、話を聞いてきました。先進的な米国の臨床研修を体験することにより、みんなが「Think globally」となってくれることを期待したのです。この時、受け入れ先を探して交渉する際にお世話になったのがACP事務局のEveさんでした。デンバーのDr. Gibbons、ワシントン州立大学のPaauw教授(後にACPワシントン州ガバナー)など多くのACPメンバーに助けられてこのプロジェクトは成功しましたが、このようなアイデアもACPの活用という意味で取り入れて行ければと思います。また、ACP日本支部は総合内科専門医がACP Fellowになっていたという経緯から日本内科学会に大変お世話になっています。専門医部会が担当してくれた実践的生涯教育プログラムのモデルなどACPの優れた点を活用しながら、今まで以上に日本内科学会との連携を大事にしていきたいと思います。東日本大震災の影響で今年度は中止となりましたが、毎年のACP日本支部年次総会・講演会なども今後自立して行うことを考えていく時期に来たと思います。今後も魅力ある活動を通じて「Think globally, Act locally」を実践する仲間が集まり若者の夢をかなえるようなACP支部を目指して努力したいと思いますのでよろしくお願いします。
2011年4月11日